川村則行「自己治癒力を高める」
2008年12月2日 by KISK事務局
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[著者] 86年東京大学医学部医学科卒。国立精神・神経センター精神保健研究所心身医学研究部心身症研究室長。研究テーマは、脳による免疫制御機構の解明、およびストレスと心身症。
[著書]「がんは『気持ち』で治るのか!?」ほか。
[コメント]本書の基本的な考え方は、「人にはすべて『自己治癒力』が生まれながら備わっており、それを『本来の自分からかけ離れた偽物の自分』が抑圧することによって、十分に機能してゆかない状況を作っているということにつきる」「自己治癒力とは、新たに生み出すものではなく、もとからある能力を解放するもの」であるとする。そのことを、できるだけ科学的に説明しようとした労作である。心と体の相関に関心のある向きには必読の書ではないか。むしろ健康とか病気を理解する上で、なるべく多くの方に読んで貰いたい。いろいろと参考になることが多い。
1 がんであることがわかっても前向きな気持ちを失わず、積極的に治療に取り組み、がんに打ち勝とうとした人たちは、生存率が高い。自分の命に主体的に関わることが大事。
2 自己治癒力を目覚めさせるポイント
① 自分の主人公は自分である。
② 本来の自分に立ち返る。
3 脳が快い状態のとき、免疫力が高まり、自己治癒力が活性化される。このため脳の罰系(苦痛)(例えば、自分を叱る)でなく報酬系(快感)(例えば、自分を褒める)を刺激するとよい。
感情でなく意志によって脳を報酬系で支配してしまうのがコツ。
4 積極的に、前向きに物事を考える「ポジティブシンキング」が大切。
5 信頼できる人にサポートしてもらう。人と人のふれあい、響きあいで自己治癒力が働く。
人間は、自分ひとりでは、生きられない。
6 能動的に休息と気分転換をする。人間は同時にふたつのことはできない。頭の中をひと足さきに、安心、愉快、満足という内容にしてしまえばいい。同時には、不安、不快、不満の念は入ってこれない。
私は、10年以上前から「人体は健康生産工場」と名付け、「恒常性」(ホメオスタシス)「自然治癒力」の活用を強調してきたが、本書は、それを更に進め、人間の脳の働き・意志の力に着目し「自然治癒力」から「自己治癒力」に高められたことに共感し、大いに啓発を受けたことに感謝したい。
がんには、西洋医学によるほか各種の治療法があるが、同じようなケースでも人によって効く場合と効かない場合がある。遺伝子の違いもあるだろうが、個人の気持ちの持ち方次第ということも、あるのではないか。そのような疑問を抱いていたが、本書によって疑問を解くことができた。
「おわり」の項で最後に「もし私が今、病に倒れていたとしたならば、私は「祈り」の力を信じ、祈りを行うでしょう。生きている主体、個人、人間として役に立つものは、「知識」ではなく、それにいのちが吹き込まれた「知恵」なのですから。」と述べられているのが印象的であった。著者のように聡明で謙虚で柔軟な発想ができる研究者が増えてくることを祈りたい。
* ロケーション(位置付け)「健康ナビ」総論A(自然治癒力)B(全人的)C(情報システム)E(自己責任)各論D(心身一如)
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