第38回(5月)定例会報告(メモ)
2011年5月28日 by KISK事務局
平成23年5月の定例会は24日(火)南青山の国際医療福祉大学大学院にて開催。代表中間報告の他、漢方の専門家李宝珠様の漢方の基本的な考え方と栄養士さんのワンポイントレッスンがありました。
<中間報告> 梶原代表
患者・市民の情報共有としては、4月定例会の講演復習、5月の講演の紹介、6月の講演予定の紹介がありました。自衛策としては「認知症対策」として、4月19日に専門家会議「認知症等研究会」を開催したこと、運転感覚強化プログラムを自動車教習所団体と協議中であること、脳機能の改善度を測る心身バランス計を発売予定であること、2つ目の地域センターを茅野にて準備中であることなどが報告されました。もう一つの自衛策「理想農法」に関しては、リヤカーで産直野菜を販売している「医農」との提携の可能性、社会運動として展開する可能性、千葉県木更津に1haの市民農園を具体化する予定などが報告されました。
<講演:「睡眠と食事―誰でもできる漢方養生生活習慣」>
㈱シンギー代表取締役社長 李 宝珠 先生
四川省の寒村ではだしの医師を経験され南開大学と都立大学の修士で学ばれた実践派の美的精悍な講師が榊原節子会員の紹
介でご登壇。中医学(漢方)の初歩的な話をしたい。西洋医学は物質を分解し人体を相手。中医学は関連性を重視。人体より生
命の過程と運動の解明を重視する。以下「養生の基本六項目」を説明したい。
1「人は本、病気は標(現象)」。人間の根本、生活態度を診る。
2 「自身の治癒力を重視」。陰陽五行と五臓は対応。その調整が大切。生命は一つの過程。円を五等分して円周を右回りで上から「土・脾、金・肺、水・腎、木・肝、火・心」と回る。この順番が「相生」関係で土が金を生み、金が水を生む等の支える関係。一方「相克」は「金、木、水・火・土」の順で金が木に克ち、木が水に克つの対立関係。「人天一体」。五臓の関係も同じ。
3 「心身互動(お互いに影響)」。「精神 胆識 意志力 聡明 迫(魄)力」が湧く。精は腎・神は心・神明・火・炎で「心腎合一」。胆識は決断力・氣の充満。意は脾・志は臓。聡は腎の穴・耳・明は肝の穴・目。魄は肺の神・力は腎。「元氣」は五臓に氣が充満。
4 「不治己病治未病」。ガン等病発生の前に未病の段階で治すのが大切。
5 「因天乃序」。天の秩序に従う。四季もあるがまず「一日の養生」を話す。円の中に頭が大きく尾が小さい白黒の勾玉が上下逆対面の陰陽図・それぞれの中に反対の黒白の小さい目がある。陰陽五行の説明の24時間体内時計だ。上が午の昼12時、下が子の夜24時。右へ陰の始まりから大きくなり最後にはすでに陽の小さい目を抱く。「①子時ねずみ真夜中23時から1時・胆系が当番」陰盛ん・就寝・夕食はいけない・消化の力なく老廃物が残る。「②丑時うし1-3時・肝系」・穴が目・肝が悪いと目が悪く・緑内障白内障・寝て肝を横に・4倍の血が入る・睡眠で血が充満・肝悪いとインポや策略力減少。「③寅時とら3-5時・肺系」・深い眠りで肝の氣を再配分・心臓病でが死ぬ時間帯・陽が増える準備。「④卯時ウサギ5-7時・大腸系の当番」・排便が自然に・大腸悪いと肺が大変。「⑤辰時たつ7-9時・胃系」・ご飯の時間・胃の血が充満・陰を補う植物を少し入れると消化よい・朝食食べないと脾が動かず・夏も体の中が冷たい・胃の出口は口・夏は冷たいもの求める。「⑥巳時へび9-11時・脾系」・食べたものを脾が分配・肉をつける・筋肉もりもり・神明が志・ストレスあると脾が傷つき土や銅の様に・脾が土のように固くは病気に・糖尿病に・脾弱いと口と水・唾液がでる・赤ちゃんは弱い。「⑦午時うま真昼11-13時・心の当番」・心火と腎水の交流・昼寝は体によい・心が軽く・自然に流れる。「⑧未時ひつじ13-15時・小腸系」・第二の心臓・昼食の消化。「⑨申時さる15-17時・黄口系」・脳が学習するとき・膵つかさどる・不足で老人乾燥病。「⑩酉時とり17-19時・腎系」・命の強さ・精を収蔵・ゆっくり燃やすと金が生・父母の元気・ゆっくり燃やすと100歳・腎の穴は耳・精力・ゆっくり使う。「⑪戌時いぬ19-21時・心包系」・心臓の肉体・喜びと娯楽の時間。「⑫亥時いのしし21-23時・三焦系」・内分泌のため準備・ゆっくり準備して待つ。以上のように一日24時間、それぞれ内臓が登場。体内時計に合わせて臓器を利用し、体を良くする。どうやって寝る・食べる・薬飲むか。時間に合わせた適切な行動が大切だ。
6 「黄帝内経」。2千年前の中国の古い医療書。第一遍「上古天真論」は「上古之人 知共道吉 法於陰陽 和於数数 食飲有節 起居有常 労作労作 故能形為神倶 面顔基本 百歳而法」とこの様な適切な食事と就眠の実践法を説明。今日は24時間の生き方を述べたが、四季の生き方、内臓の養生法の話も機会があれば。現在は漢方健康食品を製造し日本人に合うものを提供し貢献している。やさしい漢方の小冊子や自己の体に合った養生の仕方の会社案内を紹介。製造のみで個人提供は仕事としてはしていない。我々の一番に関心がある健康な食事と就眠の熱の籠もるお話に会場からの拍手喝采が続きました。
会員の多くの質問「腎臓と耳の病気・空豆や手足の真ん中の指圧・五感と連動したバランス保持・膵臓と脾臓と水の関係・便秘と乳酸菌と腸・乾燥防止・腎臓には黒いゴマや豆やモズク・赤は補血・季節ものが良い・朝食食べるかどうか」にも適切なお答え。
[補注参考 栄西の喫茶養生記の五臓和合門は「肝は木青魂眼・肺は金白魄鼻・心は火赤神舌・脾は土黄志口・腎は水黒想骨髄耳なり」と記述・項目理解の参照に]。
<栄養士さんのワンポイントレッスン:脳機能を健やかにする栄養素>
ら・べるびぃ予防医学研究所 取締役 管理栄養士 福地かつ美 先生
脳は考える場所であると同時に感情や体のすべてをコントロールする司令塔。脳の神経伝達物質に異常が出ると記憶力、判断力の低下や怒りや不安を引き起こす。よく病は気からと言われるように、不安があると病は悪化し、楽しいと快報に向かう。ストレスがあると大脳で解析し、脳の海馬という箇所で感じ取って感情が発生し、大脳で記憶される。この流れがうまく行かないと抑うつや不安、頭痛など腸の異常など体の変調が生じる。食べ物の栄養は腸から吸収されて体の隅々まで運ばれるが、中でもアミノ酸、ミネラル、ビタミンが神経伝達物質の生成に大きく関与している。いろいろあるが、中でも大きな働きをするアミノ酸などについて話をする。
1) トリプトファン:トリプトファンはビタミンB6、ナイアシン、葉酸、マグネシウムと一緒に働くと、セロトニンと言う物質を生成する。セロトニンはドーパミンやアドレナリン生成の過程にあり、精神安定、睡眠などをつかさどる。また、免疫機能を高める働きがある。バナナや牛乳に多く含まれ、ホットミルクは睡眠導入によい。セロトニンは脳の松果体というところで、夜間に多くメラトニンに変換される。メラトニンは成長ホルモンを生成するとともにアルツハイマーの原因となるたんぱく質の凝集が結果として蓄積してしまうのを防ぐ役割を果たしている。
2) グルタミン酸:ストレスなどで脳に溜まるアンモニアを排泄する働きをする。記憶力や集中力、ストレスの緩和などをつかさどる。恐怖症や痛みを抑える。大豆やチーズに多く含まれる。ビタミンB6とともに働き、ギャバという物質を作り、精神安定作用がある。ギャバは発芽玄米に多く含まれる。ギャバ入りチョコレートもある。疲れた時などによい。
3) フェニールアラニン:鎮痛作用がある。体に受けるいろいろな刺激を静めて精神を安定させる効果がある。不足すると更年期障害、パーキンソン病のもととなる。魚、卵、チーズ、アーモンドなどに多く含まれる。ナイアシン、葉酸などとともに働き、やる気を出す働きをするドーパミンを生成する。また、逆に、カルシウムやビタミンCとともに働き、ドーパミンの働きを静めるノルアドレナリンという物質をだす。ともに過剰にならないことも大切。
4) 脳内有害物質の排泄:アンモニア以外にも脳に蓄積され有害なミネラルや活性酸素なども排泄、除去する必要がある。鉛、カドミウム、ヒ素などが特に有害。排出を促進する栄養素、アミノ酸としては、シスチン(活性酸素の除去によい)、メチオニン、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB6、C、Eなど。体内時計を崩さない生活も大切。
5) 腸内環境を整える:腸は体の免疫機能の7割を担う。栄養の吸収力も担う。ストレスは善玉菌を減らし、悪玉菌を増やす、つまり腸内環境を悪化させる。代表の質問に答え、福地先生の会社の事業は、毛髪検査により、有害なミネラルはないか、必要なミネラルが足りているかを調べるという紹介もありました。
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