第39回(6月)定例会報告(メモ)
2011年7月1日 by KISK事務局
6月の定例会は28日(火)日本財団の会議室をお借りして開催。代表中間報告、NHK Worldで放送された上海での認知症治療の取組の紹介、3月に予定していた「難聴と補聴器」の講演、がん患者支援の立場からの公的制度の現状の報告などがありました。
<中間報告> 梶原代表
前回5月の定例会の講演の復習、今回の講演の紹介、7月の定例会講演の予定が紹介されました。7月は民間医療保険のお話とミネラルの話がありますが、放射能汚染に関連し、自らの重粒子線治療の際、放射線医学の先生から、体内の放射能を排出するのにビールがよいと言われ、毎日病院でビールを飲んでいたという話を挿みました。理論的には理由は解明されていないとのことです。その他、認知症対策(一環としてNHK Worldの放映内容紹介)、理想農法研究会の事業(「KIZUNA運動」で市民と農業を繋ぐプロジェクト進行中)の現状報告などがありました。
NHK World の放映内容:
『認知症の問題は中国でも大きな問題であり、少なくとも600万人、うち上海だけでも18万人の患者がいる。福祉に興味を持っていた中国人学生が、日本に留学し、日本で心身機能活性療法を学んで上海で10年前からその普及活動をしている。療法は温熱療法と手足の運動療法の組み合わせである。徘徊や暴力を伴うような重い認知症も改善されている。上海市では市の支援の下、40ヶ所の高齢者施設でこの療法が採用されている。日本のNPO(日本心身機能活性療法指導士会:直接的には小川眞誠先生)も支援に何度も訪れている。現状は指導する人材は不足しており、その育成が課題。』
なお、小川先生より心身機能活性運動療法を医学面から支援しておられる熊本大阿蘇病院理事長の内田先生の講演が熊本であること、また、梶原代表より、今回のNHK Word の放送については会員の藤原慶子様がNHKに紹介してくれた努力があると付け加えられました。
<講演:「難聴と補聴器」日本補聴器技能者協会副理事長 福澤 理 様>
福澤様は現在49歳で補聴器販売店経営の傍ら、いくつかの関連業界団体の仕事をされている。
耳が遠くなる、聞こえにくくなっている人は多い。メガネの場合、どこで買うとか購入に関する情報が多いが、補聴器はそれほど一般的になっていないので情報が不足している。耳が聞こえにくくなると、一般的にとられている方法は、
1.新聞、雑誌など通販で売られているものを買う 2.耳鼻科へ行く 3.補聴器の販売店に行く
の3つのパターンがあるが、1の通販で売られているものは集音器と言われるもので、価格は1万~2万円。補聴器は薬事法の適用を受ける医療機器だが、集音器は医療機器ではないので効果効能は言えない。耳が遠くなる原因には、老人性難聴のほか、中耳炎とか脳に障害があってなる場合もあるのでまず原因を確かめるため耳鼻科に行くことを勧める。耳鼻科の中でも日本耳鼻咽喉科学会補聴器相談医にかかることを勧める。難聴は、治療が出来る場合もあるので治療が優先される。また、手術による治療を回避するために補聴器を選ぶ場合もある。
聞こえの範囲は基本的に聞こえる音の大きさと高低(周波数)の範囲で示す。音の大きさはdB(デシベル)で示すが、正常な耳は25dBまでの音が聞こえる。26dB以上は軽度な難聴から、130dBとなるとジェット機の音。全く音が聞こえない場合もある。
音の高低は周波数Hz(ヘルツ)で示し、聴力が落ちてくると高い音は聞こえなくなってくる。通常の話は125~8000Hz。若い人は2万Hz程度まで聞こえる。
補聴器の選び方:
まずは店選び―HPで検索し、財団法人テクノエイド協会が認定する認定補聴器専門店(全国に500店ほど)の中から選ぶのがよいが、調整が大切なので、その中で近くの店を選ぶのがよい。
店を選んだら店では、
1.コンサルティング―聞こえの状況、家族構成なども大切。
2.データ―フィッティングのための測定、データをとる。耳鼻科からの紹介状にもデータがある
が、足りないものは必要応じて測定。裸耳での言葉の聞き取りの程度の測定は大切。
3.補聴器の選択・試聴―お客様の希望(例:目立たない)も入れて選び、店の内外で試聴する。
4.オーダーメイドあるいは耳型の採取―型の選択。耳かけ型と耳穴型がほぼ同数。ポケット型(箱
型)は少ない。保険が適用される国では耳かけ型が普通。日本は補聴器には保険は適用されな
い。両耳とも70デシベル以上で身障者と認定された場合には身障者扱いとはなるが・・・。
5.お渡し―使用法を確認する
6.補聴効果の確認―裸耳の場合との聞こえの違い
7.アフターフォロー―定期点検が必要
その他:
・家族など周囲の人の協力も大切(顔を見てゆっくり話す)
・オヤノコトExpoに参加する(7月16・17日東京国際フォーラム)。補聴器の話もあり。
質問に対して:
・標準的な価格1台15万~20万くらい。それ以上するものはその機能が必要かどうかで決める。
(両耳同じように悪くなる場合が多く、2倍になる)
・着ける時間は、自分の判断で。着け始めは毎日少しづつでも着けた方がよい。
・雑音の方が聞こえたりする場合、騒音抑制機能、指向性機能の付いたものがあり、自分の聞きたい声、音のみが聞こえやすくなる場合もあるので試聴してはどうか。
・耳かけ型、耳穴型は耳かけ型の方が大きい音を出せるが今は技術が進歩し耳穴型でも十分と思う。
・どのメーカーがよいかについてはあまり考えなくてもよい。扱う人、店が大切。
以上、難聴が気になる方にはいろいろ具体的なアドバイスを聞くことが出来ました。
<講演:「よりよいがん看護を目指して」東京大学医科学研究所特任研究員 児玉有子様>
医療改革懇談会(三者会)でも大変お世話になった児玉有子先生は、看護学の修士課程まで学ばれ、骨髄移植とか白血病の臨床看護とか、看護師養成教育も経験されている看護師ですが、現在は、がん患者の支援のために制度改革に努力されています。その研究成果の一部のお話をされました。お話の中心は、多くのがん患者が利用する高額療養費制度、在宅医療についてでした。
高額療養費制度は、医療費が高額になった場合、通常、最初の3カ月は月¥80,100、それ以降は月¥44,000(所得が多いと¥80,100)を超える金額は払い戻される制度。大変よい制度だが、問題もある。例として、慢性骨髄性白血病(CML)の患者がグリベック(一般名イマチニブ)という薬で治療する場合を挙げる。この薬は2,000年頃から使われ始め、同病患者の生存率を画期的に上げ、また正常細胞を傷つけない素晴らしい薬だが、服用を中断すると、50%の再発の可能性があり、一生飲み続けることになる。言わば、血圧や糖尿病の薬と同じだが、問題は値段。1錠¥2749近くし、それを4錠飲むのが標準。したがって月¥44,000(あるいは¥80,100)が一生続くことになる。したがって経済的な問題で服用を中断する人もいる。高額療養費制度の仕組みは30年前に出来たもので、これほど高額の薬の登場が前提となっていない。このような超長期生涯ローンのような場合はどう支援するかと言ったことも考えて行きたい。また、疾患別、年齢別の区切りなどをなくした制度を考えたい。
次に在宅医療について。最近、在宅医療の環境はかなり整ってきている。在宅医療は医療費を下げるためのもののはずだが、決して安くはない。在宅医療では医師との関わりは中心だが、介護保険の枠組みで使え、重要な役割を果たす職種が、在宅医療介護に必要なことをアレンジしてくれるケアマネージャー。地域連携室に依頼すると紹介してくれる。在院日数の関連で治療が必要なのに病院を出されるような場合には、医師や看護師の資格のあるケアマネージャーが便利。気に入らなければ勇気をもって変えよう。在宅医療でも出来る範囲は増えているので早目に主治医に相談しよう。がんの在宅医療の場合など、再び病院に戻ってすぐに亡くなる方も多いが、本来、患者の望みはどうなのか、最期をどう過ごしたいのか、元気なうちに家族とよく話し合っておくことが大切。
最後に要望。大学出の看護師は通常保健師の資格もあり、在宅、病院両方のことを知っているのでぜひ使ってほしい。また、看護師で病院を選ぶような時が来るような期待をもって、理想の看護師像の研究をしているので、患者・市民の立場から、看護師への注文、お気に入りの看護師像を聞かせてほしい。(看護師がこうあって欲しいというような注文があればFAX等で事務局まで)
以上、意識レベルの高い看護師が研究、努力されている様子がよくわかるお話でしたが、講演終了後、質問と言うより意見として、がん患者に、死を意識させない、改善を前提とした看護、医師の言うことに左右されず、患者を励ます看護を目指してほしいとか、在宅医療をとっても保険点数の外来とのバランスとか、いろいろ大きな問題があるが頑張って欲しいとか、というような注文も出されました。
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