第54回(9月)定例会報告(メモ)
2012年9月25日 by KISK事務局
9月定例会は18日(火)国際医療福祉大学大学院にて開催。中間報告に続いて梶原代表の市民学シリーズで今回は「血管の強め方―その2」。講演は、西川産業㈱日本睡眠科学研究所の酒井理子様より「睡眠と健康」と言うテーマでお話を聞きました。
1.中間報告
情報の共有に関して、前回8月定例会の市民学の「血管の強め方―その1」と、㈱自然美・村上百代様の講演「四季の漢方養生と夏から秋にかけてのアンチエイジング」の復習の後、今回9月の講演「睡眠と健康」の西川産業、酒井理子様の紹介、10月定例会の講演と市民学シリーズの今後の予定として、個々にあった医療・オーダーメイド医療についてを予定しており、次回10月は血液型と医療のテーマの話をする。
2.市民学シリーズ 「血管の強め方―その2」 梶原 代表
まず、血管を弱め、病気を起こす「血液の5化け」についての説明。「5化け」とは、塩化、糖化、油化、酒化、泥化の5つを言い、それぞれの意味する、塩分の取り過ぎ、カロリー過多、動物性脂肪の取り過ぎ、アルコールの取り過ぎ、ストレスが、活性酸素の発生を促し、血管壁を傷める要素と説明。
次に、類人猿健康法―類人猿時代の自然体の生活が自然治癒力を高め、病気の予防、早期回復につながるとの認識を前提にして、積極的な血液の浄化策として、1.適正な水分補給 2.抗酸化物質の摂取 3.腸内環境の浄化 4.酵素の補給(発酵食品など)5.血液循環をよくする ことなどの重要性を強調。また、血管を再生させるには、1.ヒートショックプロテイン(傷んだ細胞を修復する作用をもつタンパク質)を増やすことが大事でそれには入浴(熱めの温度で週2、リラックス温度で週5)とか、ウコン、アスピリンの摂取 2.ウォーキングを日課に 3.休養-副交感神経優位の生活 が大切。
血管の強め方のまとめとして10カ条の提案。
1.塩分を出来るだけ摂らない。
2.糖分はもちろん主食も制限する。
3.食べ過ぎない。腹六分目。特に夕食に軽く。
4.抗酸化食品を摂る。
5.生野菜、発酵食品、サプリメントなどで酵素を補給する。
6.乳酸菌など善玉菌で腸内環境を整える。
7.体を冷やさない。血液の循環をよくする。暖める。運動をする。
8.入浴でヒートショックプロテインを増やす。
9.動作はゆっくり、気持ちはゆっくり、顔はにっこり。副交感優位の生活。
10.頭脳疲労(考え過ぎ)をなくし、天地と一体のイメージで気力を高める。
情報チップ集の中では、石原結實先生の「病気は自然治癒力を高めて治す」(ナツメ社)を推薦。なお、全文は当会ホームページに掲載されています。
3.講演「睡眠と健康」 西川産業㈱ 日本睡眠科学研究所 酒井 理子 様
簡単な自己紹介の後、今回お話しされる「睡眠と健康」の副題は「眠りを知って上手に眠る」。お話の内容の項目の紹介から始められました。
1)西川産業㈱および日本睡眠科学研究所の紹介
西川産業は1566年創業で何と466年の歴史。近江八幡からスタートして、江戸に進出したのは1615年。現在は「布団の西川」と言われているが、江戸時代は蚊帳の商店だった。布団の販売を開始したのは明治になって1887年。日本睡眠科学研究所が同社内に設立されたのは1984年。より健康で快適な睡眠環境の探求と、人間の睡眠生理に関する研究に取り組むことを目的。
2)昨今の健康と眠りの関心度
近年の国民医療費増大を背景に日常の健康管理に対する関心は高まっている。食事、運動と並んで睡眠は3大要素の一つ。睡眠時間は減りつつある。首都圏のビジネスマンについて見ると、1900年には7時間ぐらいだったものが2000年には6時間余りにまで減少。戦前と現代を比べると、全体的に遅寝遅起き傾向に進んでいるが、朝のスタートは会社や学校があり、そんなに遅く出来ないので、結果、睡眠時間の減少となっている。健康に対する意識はあっても実際に実現できているかと言うと、半分ぐらいしか出来ていないと言う人が多い。睡眠に対する不満のある人は67%にも上る。寝具への不満を持つ人は37%。昼寝、仮眠をしたい人は増えている。したがって、昼寝ビジネスなども出現。
3)私たちはなぜ眠るのか
身体を支配している脳の働きを健やかに保つために眠る。脳を鍛え、性能を高めるため、脳への栄養補給、脳の休養・睡眠、脳の訓練をする。現在106歳で、しいのみ学園を作られた、医学博士昇地三郎さんの例を説明。脳を鍛えている。たとえば95歳で中国語勉強、中国語で講演するまでに。衰えかけた脳を前頭前野が補う。もう一人、脳梗塞や痴ほう症を克服して、マラソン100歳以上の部の日本記録保持者大宮良平さんの例も。体を動かすことも脳の健康には大切。不眠記録には264時間と言う例もあるが、睡眠不足は心身機能を低下させ、身体の抵抗力を弱めるので、睡眠不足による大事故等の例は多い。
不眠症のタイプには、入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠困難などがあり、これらが週3回以上で、1か月以上持続すると「不眠症」と診断。2、3日なら問題ない。原因としては、寝室環境、不安やストレスなど心理的要因、加齢による老人性不眠がある。不眠症が進むと睡眠障害となる。睡眠障害には精神生理性不眠(ストレス性)、睡眠時無呼吸障害(ストレス・メタボリック症候群による。いびきは気道が狭くなっていることの表れで危険信号。酸素の供給不足を招き脳や心臓などに負担がかかり、生命に危険が及ぶ場合もある。)、薬物性睡眠障害(睡眠薬の常用)、概日(サーカディアン)リズム性睡眠障害(身体の1日の周期が狂う)などがある。
4)眠りのリズムと身体のリズム
なぜ朝起きて夜寝るのか。体内時計が働く。1日は約25時間。強い光(太陽光)が脳の中の視交叉上核に作用する。サーカディアン(概日)リズムとは、1日単位の活動と休息のリズムで、地球上のほとんどすべての生物がもっている。光の非視覚的生理作用―いろいろなホルモン分泌に影響し、メラトニンなど睡眠との関わりが大きいものもある。かつては、夜は暗かったが、電気の類がここ100年ぐらいの間に夜を明るくして、24時間明るい生活が当たり前になってしまった。光をコントロールすることは大切。
体温は朝から夜にかけて上昇し、深夜から朝にかけて低下、朝から再び上昇。眠気は朝から昼にかけ低下するが、昼過ぎ3時ごろまで一旦上昇し、夜の半分ぐらいのピークを迎えてまた下がり、夕方から夜にかけて上昇する。一旦上昇する午後2時、3時に15分から20分程度の仮眠をとるのはいいことだが、ぐっすり寝ると夜の睡眠に響く。
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、一般的には、前者は浅い眠り、後者は深い眠りと言われ、約90分(~110分)のサイクルで一晩に4~5回繰り返す。ノンレム睡眠をさらに4段階に分けて考えると、床に就いた最初のノンレム睡眠が最も深く、繰り返すたびに浅い眠りのノンレム睡眠になり、最後に覚醒。生長ホルモンは深い眠りのときに出るので、こどもの成長や美容には大切。睡眠は脳波でも計測でき、くつろいだ覚醒時のアルファ波、うとうとのシータ波から深い眠りのデルタ波に至るまで段階がある。ノンレム睡眠は覚醒中の多量のエネルギーを消費する大脳の回復に大切。レム睡眠は脳を活性化させる眠りであり、記憶の保持、保管等情報の整理には大切。睡眠時間の短い短眠者(例・ナポレオン)と長い長眠者(例・アインシュタイン)も深いノンレム睡眠には余り差がない。加齢に伴い睡眠時間は減少するが、レム睡眠の絶対量もノンレム睡眠に対する比率も低下。日中の活動が睡眠の質を左右する。寝だめは出来ない。
5)眠りと寝具・寝室環境と快眠の秘訣
寝室環境として理想は、光=30ルクス位(ほの暗く、何かが見える)以下で間接照明。音=40dB 以下。温度=夏25℃、冬15℃、28℃が上限。湿度=50%程度。寝具には、保温性、吸放湿性、フィット性(掛け布団)、支持性(敷布団)の機能に加え、防ダニ、抗菌、消臭、洗濯、収納性、肌ざわり等が求められている。布団の中の温度・湿度を寝床内気象と言い、33/50と言うことばがある。温度は33℃±1℃、湿度50%±5%がよい。夏場の暑熱対応敷き寝具として、体自体は冷やさず除湿、冷感効果のある、除湿シートとか麻・竹素材のもの、冷感ジェル、送風敷きパッド(送風機がついている)なども出ている。枕は頭より首を支えるもの。首に優しいこと。体圧を分散させるため自分の体形に合った敷き寝具と枕の選択を。ベッドは固い方がよいと言うのは都市伝説で、人により異なる。寝姿勢と体圧分散を考慮。快眠の秘訣として、まず①入浴。ぬるめのお湯にゆっくり、寝る30分~1時間前に。朝は熱めのシャワーをさっと。②寝る前に軽いストレッチとかマッサージを。ツボを軽く刺激。③朝の光は大切。体内時計をリセットする。④音。ゆっくりと繰り返すリズムがよい。あまり静かなのも眠りにくい。⑤香りもよい。ラベンダーやカモミールには誘眠効果。⑥触感も大事。肌ざわりのよいものを選ぶ。
最後にまとめとして、体内時計がある以上、規則正しい生活の大切さを強調され、アカデミックで、かつ実用的な講演が終了。会場から出されたいくつかの質問にも答えて頂きましたが、会場からも解決の方法の提案があるなど、和やかに終了。酒井先生どうもありがとうございました。
Comments