市民本位の健康医療に向けて

第55回(10月)定例会報告(メモ)

2012年10月25日 by KISK事務局  


第55回定例会は10月16日おなじみの国際医療福祉大学大学院にて開催。中間報告に続いて代表の市民学シリーズの報告「血液型と健康」、講演は、食の安全と安心を科学する会理事長の山崎毅様より「食の安全を安心に変えるために」を聞きました。

Ⅰ.中間報告

情報の共有として、9月の定例会の簡単な復習、10月定例会の内容や講演者の紹介、11月定例会の予定などがありました。市民学シリーズは、10月から個別化健康法に焦点を当て、今10月は「血液型と健康」、11月は「体質のタイプ別健康法」を予定しているとのお話でした。また、患者・市民の自衛策について、Facebook上に立ち上げた、健康医療市民倶楽部の今後の進め方について、日経新聞関連のメディアと協議していること、企業も含めた三者体制で進めたいとの報告がありました。

市民学シリーズ第13弾「血液型と健康」梶原 拓様 健康医療市民会議代表

市民学13弾、オーダーメイド健康法その1です。近年遺伝子の解明が進み血液型による体質の差が明らかになりつつあり、漢方やアユールベーダーでの体質の差、さらにはOリングテストや波動テストも科学的解明へと進み、「体験的エビデンス」を大切にした、体質の差によるオーダーメイド健康法や治療法が関心を持たれている。市民は、専門知識は浅くても専門枠にとらわれない幅広い発想や自由性があり自分たちの体験で実証的に検証できる有利さがある。医療側に「お任せ」でなく自ら学習し実践する努力が大切だ。本日はABOABの血液型による相異を話す。藤田紘一郎東京医科歯科大学名誉教授は免疫や感染症の研究からは血液型で免疫力に差がありかかりやすい病気も決まり、食べ物の好き嫌いも決まっていると。鎌谷直之東京女子医大客員教授も病気の原因遺伝子の解明で血液型で病気のなりやすさに差があり、薬の有効性の傾向が判かりつつあるとされる。またABO「血液型物質」は糖でできておりその合成を可能にしたのが原始生物で、生物は進化しながらその形質を受け継いだ。A・B・O・AB型の四種があるのは霊長類だけ。日本人はO31%,A38%,B22%,AB9%で国毎の特徴がある。現在の人類は10万年前にアフリカで誕生しBC4万年のクロマニヨン人は全てO型で集団の狩りをし胃酸で肉類を効率よく消化した。その後BC3万年前にアジア大陸に分散した新モンゴロイドは穀物を栽培し定住生活をし腸内細菌も変わり一部から血液型物質の遺伝子が人間の体内に侵入しA型人間がBC2.5~1.5万年に誕生。B型人間はインドやウラル地方で家畜の肉と乳製品を食料にした遊牧民でBC1万年前に誕生。AB型人間はおそらく騎馬民族が移動するなかでごく最近A型とB型の混血で誕生したと思われる。腸内細菌が原因か。私達が食べている動物や植物にも血液型物質が入っている。牛はA型物質とB型物質の両方、豚はA型のみ、羊とクジラはB型のみ。植物界にも血液型物質をもつものがあり、大根はO型のみ。ゴボウやキャベツもO型もつ。A型はツバキ、B型はモチノキ、AB型はソバとコンブなど。A型の人はBに抗体をもち、B型物質をもつ食物とは合わない。B型の人はA抗体をもつ。血液型によって免疫学的な立場から合う食物と合わない食物がある。その例としてO型にはゴボウ・キャベツ・リンゴ、A型には豚肉、ウナギ、Bにはクジラ、ハマグリ、ABには牛肉、コンブ、ソバなどが合う食物として例示され、また合わない食物も例示された。また食物アレルギーとレクチオン(糖鎖を認識するタンパク質)からみた血液型別の合わない食物にも触れられ、また病気のかかりやすさも血液型が左右するとして、血液型別にかかりやすい病気とかかりにくい病気を示され、これを参考に生活態度を律することが大切とされました。A型は免疫力が弱くそれを高めるため腸内細菌の餌となる穀類、野菜、豆類、果物を積極的に摂る。Oは胃酸が多くアルカリ性の飲料水を摂る。Bは活性酸素が発生しやすく色のついた野菜や果物など抗酸化作用のあるもの摂る。AB型はストレスに弱く疲れやすいので食生活や明るく楽しい規則的な生活をするなどその理由を含めたお話が。また、頭の禿げ方も、Oは頭頂部から、Aはおでこからとのお話や、肥満や長寿と血液型にも触れられ、その長所や短所をわきまえた行動やその適否を心得た生活を心がけるべきと締めくくられました。会場では自分の血液型に関するテキストの中身を目で追いながら、今後の新しい自己健康学のお話に興味が尽きず、拍手喝采が続きました。素晴らしい方向性のお話でした。(ホームページに全文)

Ⅲ「食の安全を安心に変えるために」山崎 毅様 NPO「食の安全と安心を科学する会」理事長

dr_yamasaki

梶原代表から、食の安全と安心の最適化の最高の専門家とのご紹介で、元気一杯のエネルギッシュな山﨑理事長のお話が始まりました。東大農学部大学院で学んだ獣医師で獣医学博士、製薬会社も経験。長寿には食が大切、07NPO「食の安全と安心を科学する会」を設立、一昨年東大の食の安全研究センターにフードサイエンス棟が建ち11年2月そこに事務局を置き活動中。01年狂牛病が発生し牛肉由来の食品会社や治療の薬品会社はパニック状態。厚生労働省も日本の牛肉は安全と思っていたがというだけで余り機能せず。食には「安全と安心」の二つが必要と痛感しNPOを立ち上げた。そして昨年の東日本大震災での放射能の問題で「安全か・安心か」が世間の大関心事。私は6年間海外でサプリメントや薬の研究をした。私生活ではカラオケも普及。さて「日本は欧米より食の安全性は高いか低いか」会場での挙手は大多数が高い・数名が低い。実は食中毒の年間死者数の例で日本11人、米国5000人、英国687人、仏国400人、豪州120人と日本は安全性が高い。「消費者は食のリスク情報をどうとらえるか」「出荷停止が解除された福島県の牛肉は放射性セシウムの全品検査なくても問題ないよね?。レバサシが販売禁止にだがあれは牛なので鳥さしは問題ないよね?」の問題。科学者寺田寅彦は「ものを怖がらな過ぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはなかなかむつかしい」とする。

「消費者のリスク情報の認知の特徴1・安全か危険か。消費者の態度は二者択一が多い。本当はリスクはアナログ・程度が基準なんだが」「同じ認知の特徴2・飽食の時代と食の多様化から。牛肉が危険そうなら鶏肉豚肉で、牛肉は問題がなくなったら再検討ね」。食のリスク情報が氾濫するとマスメデァや消費者がとまどい「フードインフォマフィラシー・食品情報過敏症」になりリスク認識にバイアスがかかることが。過敏な人が落ち着き、消費者が正しく理解するには科学者がリスク情報を科学的・中立的で判りやすく伝える活動が大切。消費者が自分自身で判断するのが基本で、必要以上に行政がリスクを規制するとリスク情報を誤って理解する消費者が必ず現れる。私は「食の安全の最適化」を目指している。

「同じ認知の特徴3・イメージの因子には1恐ろしさ因子2未知性因子3災害規模因子がある」。これで高く感じてしまい「やっぱり放射能は怖い、どれくらいでガンかは判らないので、子供達には汚染食品は絶対に与えないわ」となる。「同じく認知の特徴4・二重過程モデル(態度を形成する心理プロセス)1中心的ルート処理、2周辺的ルート処理だが、専門性がなく、動機づけもないと、周辺的ルート処理になりがち」「ベクレルはよく判らないし、行政は信用できないので、今はNHKアサイチ情報で魚はやめておこう」となる。消費者のリスク認知に影響を与えるのは、「マスコミ、行政機関、食品事業者、専門家、口コミ(市民)、市民団体」があるが、消費者が信頼できる市民向けの情報はマスコミが多いが、マスコミの特徴は、報道スタイルがセンセイショナルで影響が甚大・視聴率や部数で存続・専門家の取材で信用されやすいが科学レベルや鵜吞みの問題も・警鐘の性格・リスクの大きさや確率が不明確でとにかくクロとの印象が強い、とされる。新聞でも大見出しと内容の詳細が異なることがある。「風評被害」の定義は、ある社会問題が発生し、大きく報道されることによって、本来「安全」とされるものを人々が危険視し、消費・観光・取引をやめることでもたらされる経済的被害。パラケルスは「毒か安全かは量で決まる」とする。「放射能はどんなに微量でも毒」という仮説は誤り。いろいろの資料を説明され、チェルノブイル累積で500mSvミリシーベルト以下の低線量ではガンは増えない、インドの自然放射線量が500mSv超の地域でもガンのリスク増はみられなかった、広島長崎の白血病死亡リスクは200mSvでは差がない等のご指摘。

厚生労働省は124月食品の新たな基準値の設定値について「現在の暫定基準値適合の食品は、健康への影響はないと一般的に評価され、安全は確保されているが、より一層、食品の安全と安心を確保する観点から許容されている年間5mSv1mSvにしこれに基づく基準値に引き下げる」考え方から、放射性セシウムの食品の許容量を500ベクレル/kgから新基準値100ベクレル(飲料水10.牛乳と乳児用食品50)に引き下げた。必ずしも科学的ではない。EUは一般1250,米国1200ベクレルである。

「同認知の特徴5・リスクコミュニケーションのパラドックス・主張や解説が必要となった段階で疑念でいっぱいになる・リスク管理責任者が「安全」を語れば語るほど疑われる」。

信頼を失った人が発言しても逆効果。12年7月福島で食の安全の再興フォーラムが開催され出席。現地では風評被害で心がすさんでいる。東京の本物の専門家が福島のモモは美味しいと食すれば自信をもって大丈夫といえると。情報発信が誰かが意味がある。次いで食品からの放射性物質の摂取量推計を表で説明され、厚生労働省の11年の東京、福島、宮城の市場の調査を基にした放射性セシウムの人の摂取総量の推計値は年間0.002~0.02mSvで、自然界からの放射性カリウムの摂取量0.2mSvに比べて非常に小さい値とされた。また中川恵一氏の「私たちの生活は発がんリスクに満ちている」の表で日常生活のストレスで、喫煙2000mSv.肥満・運動不足250~500.野菜嫌い150~200mSvの値を示され、年間100mSv以下では発がんリスクの心配はないと多くの専門家が考えているとされた。東京とニューヨーク間の飛行機片道旅行では放射線0.1mSvだ。総合的な数字の理解が必要。自然界の放射能数値や生活習慣ストレスの数値のなかでの暫定規制値の根拠・年間5mSvや強化規制値1mSvの位置づけの理解である。次いで「消費者のリスク情報の認知の特徴6・リスク情報の送り手が信頼できるか」で、一般市民は科学者や専門家のような知識を持たないので、解説でも簡単には判断できない。情報のみならず伝えてくれる相手が信頼できるかを基準に安全・危険を見極める。マスコミは、恐ろしさ因子や未知性因子を強調する報道は風評被害につながるのでできるだけ避ける。食の人体への健康影響を数字を使って分かりやすく報道する。取材した少数の専門家のコメントを鵜呑みにしないで、十分な科学的データを産官学から集積し総合的に市民への健康影響を優先して報道する。「木を見て森を見ず」の報道は避ける。「恐ろしさ」や「未知性」は食の不安―ストレス―健康への悪影響にむしろ繋がると心得ること。

行政機関は、迅速な規制の実施と、情報を常に市民に公開し市民の不信感をなくす。明らかに安全な食品まで規制の対象にしない。そうすると風評被害+不信感(狼少年効果)を助長。専門家・市民・マスコミの協力をえて分かりやすい情報を発信する。食品事業者は、誇りをもって万全の品質管理やリスクマネジメントを実施し、日頃から市民に向け情報を公開する姿勢。情報の送り手で最も説得効果が高いのは1魅力的・好感度が高い(元気な知事や市長など) 2受け手と類似性が高い・市民団体・ボランティア団体 3信憑性がある・中立性と専門性。専門能力と誠実さを兼ね備えた市民団体に情報公開ができる民間企業は、食の安全について消費者の信頼を得られる可能性が高い。石川洋さんの「売れているからいいのではない お役にたっているかどうかである」を示され、最後に自らカラオケ森山良子「涙そうそう」を唄われ会場に溶け込んだお話が終わり、「食の安全と安心を科学する会SFSS」は、国内外への中立的情報をわかりやすく提供、そのための研究と啓発、これにより生活者の安全安心を守り産業界の健全な繁栄に寄与する組織で、事業へのご協力をと、締めくくられました。質疑に移り、温泉の様々の効用やビールの効果などを含め体験的エビデンスが大切、市民の立場での情報交換と協力や連携が重要などが議論され、身近で一番大切な食の安全の、判りやすく深い実行論を含むエネルギッシュなお話に会場からの拍手喝采が続きました。有難う御座いました。

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