市民学シリーズ vol.14 「オーダーメイド健康法」その2: 体質別健康法
2013年1月31日 by KISK事務局
市民学シリーズ「オーダーメイド健康法」その2
体質別健康法
2012年 11月20日 配布資料
前回は「オーダーメイド健康法」その1で血液型別健康法を説明。
今回のオーダーメイド健康法(個別化健康法)は漢方とアーユルヴェーダの体質別の健康法「あなたの体質は、どのタイプ?」。
目 次
第1 漢方の体質 … p. 1
I.「実」と「虚」 … p. 1
II. 生体のもつ性質で「陰」と「陽」に分ける … p. 2
III. 漢方の腹診では虚実の判定と「気」「血」「水」の判定が主となる … p. 2
第2 アーユルヴェーダの体質 … p. 3
I. 五つの元素 … p. 3
(1) 「地」のエネルギー … p. 4
(2) 「水」のエネルギー … p. 5
(3) 「火」のエネルギー … p. 6
(4) 「風」のエネルギー … p. 8
(5) 「空」のエネルギー … p. 9
II. 三つの性質「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」 … p. 10
第1 漢方の体質
参考図書 菊谷豊彦「漢方DE元気百科」保健同人社 その他
漢方では、陰陽虚実、気、血、水でだいたいの診断、処方が決まります。
I.「実」と「虚」
「実」については、肥満している人を想像すると理解が簡単です。一般に非常に肥満している人は、一見丈夫そうでがっちりしており、病気にかかりにくいといった感じですが、漢方ではこういう人を病邪、病が体内に充満していると考えます。それに対して拮抗する精気、体力は充実していて、病邪とのバランスがとれている、病気や病邪が体内に入っているけれども、体のほうがしっかりしている拮抗状態になり、病気を押さえ込んでいるといった考え方をします。たとえば、肥満体の人はいかにも丈夫そうですが、実は通風もあれば糖尿病、冠動脈疾患、心臓病などがあって、悪くすればポコッと死亡することもあるわけです。
・筋肉が発達している人は実。
・首の太い人は実。
・おなかの肉が厚くて張りがある人は実。
実の人は胃腸が強く、暑がりで苦いものも平気で食べられます。ですからビールが好きです。
また、会議の席などでどんどん発言するような人は、元気と活力があって実の人です。
実は、一見丈夫そうで、病邪と体力が拮抗している状態ですから、病邪を追い出し体力を優勢にもっていくため瀉剤を出します。それによって病邪を攻撃し体内から追い出そうというわけです。
一方「虚」は非常に細い人で、かっての結核患者などがその典型です。冷え性、胃下垂の人、ちょっと食事をすると満腹になったり、朝寝起きが悪かったり、午前中調子が悪く夜更かしはできるけれども疲れやすい、何かするとすぐ「疲れた」を連発するような人を虚といいます。そして虚の定義としては、病邪が体内に入っていて、それに対する体力、精気、元気が低下し、病邪の勢いが優勢である状態とするわけです。
・筋肉のやわらかな人は虚。
・首が細くてひょろひょろしている人は虚。
・お腹の肉は脂肪太りで厚いけれども、ぶよぶよしているのは虚。
虚の人は胃腸が弱く、甘いものが好きで苦いものが嫌い、冷たいものは好まない
ビールよりも管酒がいいといった人です。
虚の場合は体力が低下しているので、それを補うよう補剤を使います。つまり体力を充実させて病邪との勢力バランスを優位にしようという狙いです。
また虚の人は消極的で、会議の席などであまり発言しないタイプです。
II. 生体のもつ性質で「陰」と「陽」に分ける
「陰」という言葉は、じめじめして冷たく元気がないというイメージですが、まったくそのとおりで、汗が少なく、寒がりで冷え性の人です。「陽」は日向で元気よく充実している感じですが、汗が多く暑がりの人で、のどが渇き冷たいものが好きな人です。
虚実と陰陽は似ているのですが、虚実は病気に対する抵抗力をはかる尺度であり、陰陽は生体のもっている性質、つまり寒がり暑がりといったような性質を指すといっていいでしょう。しかし、現実的にはどこかで共通点が生まれてくる場合もあるのです。つまり、一般的には陽の人は実で、陰の人は虚ですが、現実的には陰だが実だという人もいるのです。
いずれの処方にしてよいか迷ったときは陰証、虚証と考えて処方します。
III. 漢方の腹診では虚実の判定と「気」「血」「水」の判定が主となる
「気」とは、われわれが毎日元気でいるのは、体の中に生来もっている気がめぐっているためと考えます。気は動きはあるが、目には見えません。たとえばショックを受けると気落ちはしますが、これは気がどこかに止まってしまったわけです。つまり気が滞ったわけです。食道神経症、心臓神経症の人は「何か詰まって仕方がない」と訴えますが、これは気がそこで滞った状態であるわけです。
さらにいえば、気とは体の諸機能の異常と考えます。ぜんそくで咳き込み、しゃっくり、くしゃみ、のどのつかえ、これらはいずれも気の異常です。
次は、「血」は血液が停滞するために起こる状態です。この血液は主として静脈血です。たとえば痔核は痔の静脈血のうっ血で起こりますし、食道静脈瘤も食道部静脈の血液のうっ血です。うっ血した血液を「おけつ」といいますが、こういう血液状態の人は顔が赤黒かったり、唇が黒かったり、大便の色が黒ずんでいたりします。
「水」は水毒といい、からだから分泌される水分をいいます。胃液、消化液、涙、唾液、尿、関節液などの体液でっす。症状でいえば、むくみや、お腹を叩くとピチャピチャするのは胃内停水といって水が滞っている水毒の状態です。唾液や涙の分泌はどうか、汗は多いか少ないか、舌は乾いているかどうか、じん出液はないか、これらの点を調べます。
このように水毒は体の中の水分の配分がアンバランスになっている状態のことですから、治療としては水を追い出すための利水剤を使います。
第2 アーユルヴェーダの体質
参考図書 西川真知子「アーユルヴェーダ」マイナビ その他
I. 五つの元素
アーユルヴェーダでは、存在するすべてのものは自然の五つのエネルギーからできていると考えます。具体的には地、水、火、風、空で、五元素と呼ばれています。
この五つのエネルギーは、大自然の中だけに存在するのではありません。たとえば、晴れた日は「火」のエネルギーが強くなるように、私たちはどこで暮らしていても、これらの影響を受けています。
五つのエネルギーの変化に合わせて暮らすことを説くアーユルヴェーダ。体調や心の変化もこの五つのエネルギーの増減で考え、シンプルな暮らし方、また、生き方の智恵を教えてくれます。
(1)「地」のエネルギー
・母のように安定した地のエネルギー
・安定していて、おだやか
・しっかり私たちを支えるもの
・私たちの体では、骨格や筋肉が地のエネルギー
(「地」のエネルギーを多く持っている人)
・思考や行動が落ち着いている人
・母なる大地のように安定した精神力をもつ人
・穏やかな人
・愛をもって人と接することができ、思いやりや慈しみに満ちた人
・辛抱強く、忍耐力もある
(「地」の人のキーワード)
「仁」「愛」
(問題は)
運動不足などで地を増やす行動でエネルギーが増えすぎると、
・頑固になって凝り固まったり、
・動きが悪くなり引きこもったりする
・落ち着かない、自己中心的になってしまうなど
地のエネルギーが不足したら、自然の中で土に触れたり、土の中の根菜類を食べるなど、地のエネルギーを取り入れるといい
(コミュニケーション)
「地」のエネルギーをもつ人の特徴
・ヒトの言葉に傷つきやすい
・自分の愛情が足りないのではないかと考える
・嫌われているかしら、と思いやすい
(不調のとき)
・現実を受け入れられない
・引っ込み思案になってしまう
・夢中になれるものがない
・頑固なほどこだわってしまう
・体が重たい
(「地」の人へのメッセージ)
周囲は、あなたといることで、安らぎ、愛情を感じています
慈しみをもったあなたは、そのままで素敵です
(「地」のもつ要素)
1. 属性 安定、重さ、遅さ、硬い、密な、広大
2. 環境・状態 おだやか、安定している 変化がない
3. 体 骨格、筋肉、内臓系、がっちりしたもの
4. 心・性格 集中できる、思いやりがある
5. 生活・生き方 安定している、核がある、落ち着いている、風格がある
6. 食べ物 根菜類、大きく密なもの
(2)「水」のエネルギー
・潤い、流れる しなやかな水のエネルギー
・やわらかく、しなやか
・潤いを与えるもの
常に上から下へ流れる性質をもち、血液、リンパ液など体液のすべては、この水のエネルギーの影響を受けている
(「水」のエネルギーを多く持っている人)
・こだわり過ぎることなく、いい意味で物事を水に流していける
・順応性をもった人は、「水」のエネルギーの人。
・相手を敬うことができ、水が抵抗せずなじむように平和を愛する
(「水」の人のキーワード)
「礼」「平和」
(問題は)
水のエネルギーが強くなりすぎると、気持ちがどんよりと沈んでしまったり
誰かに頼りすぎ、自立できなくなる
頑固になる、人を信じられないなど水のエネルギーが不足している場合は、海や川など水辺に出かけたり、みずみずしい果物をとるなどして、水のエネルギーをとり入れるとバランスがとれます
(コミュニケーション)
・目立つことをせず、騒がない
・自分はみんなの役に立てていないと思う
・場を乱すようなことが嫌い
(不調のとき)
・つい誰かに頼りたい
・まわりの変化についていけない
・楽しめない、楽しくない
・元気が出ない
・体が重たい
(「水」の人へのメッセージ)
「いつも頼りにしているよ」
あなたがいると、その場所に穏やかな空気が生まれます。控えめなあなたですが、実はみんなの心の拠りどころなのです。
(「水」のもつ要素)
1. 属性 ひんやり、湿っている
2. 環境・状態 湿り気、じとっとしている
3. 体 リンパ液、体液全般 潤わせるもの、むくませるもの
4. 心・性格 感情的、涙もろい、浮き沈みが激しい
5. 生活・生き方 なじむ、変化を乗り越える
6. 食べ物 果物や野菜など、みずみずしい食べもの
(3)「火」のエネルギー
変化、動きを与える
生きるみなもと
体内の体温や消化力、酵素など分泌や代謝に関わるものは、この「火」のエネルギーが司っています
(「火」のエネルギーを多く持っている人)
・情熱的で、次々とものごとを行う積極性があらわれます
・野心に燃え、何かを達成したいと望みます
・正義、道徳を重んじ、正しいものごと、善悪の判断をきちんとします
(「火」の人のキーワード)
「正義」「達成」
(問題は)
火のエネルギーが強くなりすぎる、ときに嫉妬しやすい心を生んでしまうこともある
やる気がおこらない、すぐあきらめてしまうなど、エネルギーが不足している場合は、太陽の光を浴びたり、南国など暖かい場所に出かけたり、温かいものを食べたりして、火のエネルギーを自然から受け取りましょう
(コミュニケーション)
火のエネルギーをもつ人の特徴は
・成功できないのではないかと不安になる
・できるはずがない、と考える
・自分の道に口を挟まれたくない
(不調のとき)
・人を許せない、イライラする
・つい意地悪になってしまう
・自身が持てない
・不平不満を言ってしまう
・胃腸の調子がすぐれない
(火の人へのメッセージ)
目標を達成できたことを尊敬
決めた道をグングン進めるあなた。周囲の人は、あなたが何か達成できる人だと敬意を覚えています
(「火」の持つ要素)
1. 属性 情熱的、熱い、鋭い
変わりやすい、辛い、臭い
2. 環境・状態 熱い、太陽がまぶしい
3. 体 代謝、体温
消化力、酵素
4. 心・性格 勇気、効率
気づきを大切にする
5. 生活・生き方 曲がったことが嫌い、
思い込んだら情熱的に進む
6. 食べ物 辛いスパイス、脂っこいもの、酸っぱいもの
塩味や酸味のあるもの、熱いもの
(4)「風」のエネルギー
・なびく、変わる
・自由な風のエネルギー
・すべてを動かす原動力となるエネルギー
・体内では、呼吸がこの風によって支配されている
・体内では、水と火のエネルギーの血液を呼吸によって流している
(「風」のエネルギーを受けている人)
・いろいろなことに興味を示し、また発想が豊か
・想像力で悟りを開き、真理を追究したいと考え、どんどんものごとを知りたいと貪欲になる
(「風」の人のキーワード)
「智」、「真理」
智をもってものごとを追い、いろいろな方向に吹く風のように、自由な発想力をもつのが、風の人
(問題は)
風のエネルギーの影響を受けすぎると、
ひとつの場所に留まることがなくなり、思考や話が飛びやすくなったり、興味があるものが多過ぎて、ひとつのものに集中できなくなってしまう
気分が沈んでしまう、思考が凝り固まり、新しい意見を受け入れられないなど、風のエネルギーが足りないときは、自然の中を吹く風を意識してみよう
また、乾燥したものや葉もの野菜など風のエネルギーをもつものを食べてみる
(コミュニケーション)
風のエネルギーをもつ人は
・いろいろなことに興味を示す
・何をやっても興味程度しかもてない
・自分には能力がないと思う
(不調のとき)
・くよくよしてしまう
・優柔不断ぎみ
・ソワソワしてしまう
・不安、心配になりやすい
・肌が乾燥しやすい
(「風」の人へのメッセージ)
「鋭い洞察力だね、本質をついている」
あなたが追い求める真理は正しく、周りの人に物事の本質を教えている。その興味をキープしよう
(「風」のもつ要素)
1. 属性 自由に動く、変わりやすい
乾燥、軽い、苦い
2. 環境・状態 乾燥している、変わりやすい、風が強い
3. 体 神経、循環、
細く、骨ばっているもの
4. 心・性格 直感が鋭い、人と交流することが好き
5. 生活・生き方 よく動く、空想にふける、情報に敏感
6. 食べもの 葉野菜、乾燥した豆類、苦い味のもの
(5)「空」のエネルギー
・あらゆる可能性をもつエネルギー
・うつろで空っぽでもあり、また、あらゆることが起こる空間や可能性も指している
・これから何かが入ってくる場所、入る可能性をもったスペース
・人の体にも「空」。空に、にくづき偏「月」をつけると「腔」になる。鼻腔、口腔、胸腔などが「空」のエネルギー。
(「空」のエネルギーに満ちた人)
・落ち着いていて、あくせくせず、
・見返りを求めず
・心にゆとりをもっている。
「ゆとり」こそが「空」のエネルギーをいちばんよく表しているかもしれない
II. 三つの性質「ヴァータ」「ピッタ」「カパ」
五つのエネルギー(地・水・火・風・空)の組み合わせで、アーユルヴェーダの基本「三つの性質」(ヴァータ、ピッタ、カパ)が構成される。
「ヴァータ」は風と空
「ピッタ」は火と水
「カパ」は地と水
これら三つの性質のうち、どの性質をいちばん多くもち、どれがいちばん増えやすいかという本質は、人によってある程度決まっているといわれます。
また、時間帯や季節、年齢や生活環境などによっても、五つのエネルギーの影響を受けて、三つの性質は増えたり減ったりします。
<エネルギーを意識してナチュラルに暮らす>
五つのエネルギー、三つの性質、これらは、今現在も、あなたの心と体に影響を与えています。
なんだか今日はイライラするなぁと思うとき、もしかしたらそれは、きのう食べたスパイスの、火のエネルギーのせいかもしれません。
そんなとき、甘いものをとったり、水泳をしたりして、火を抑える要素を生活の中にプラスしてみましょう。
アーユルヴェーダを知れば、このようにして日常の不調にすぐ対応できます。
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