第60回(3月)定例会報告(メモ)
2013年3月23日 by KISK事務局
第60回(3月)定例会報告(メモ)
第60回(3月)定例会はおなじみ国際医療福祉大学にて開催。代表の中間報告と過去59回の定例会を簡単に振り返った後、泉田良一先生、ロコモチャレンジ推進協議会委員長、から高齢化社会に大きな問題となると思われるロコモのお話を聞きました。
1.中間報告 梶原代表
前回の定例会の簡単な報告、本日の泉田先生と講演の簡単なご紹介、次回の予定などに続いて、代表中心に、農水省所管の事業として協議している「レクトレ事業」と、事業を進める団体として準備中の社団法人「健康市民協議会」の簡単な説明がありました。なお、レクトレ事業計画の詳細は4月の定例会にて説明の予定。
2. 「定例会5年間の一言特集」梶原代表
5年間、多くの素晴らしい先生方から貴重な御講演をいただきました。改めて御礼申し上げます。この資料は健康医療市民会議の定例会での67人の全講師の先生方の貴重な御講演の記録から事務局がまとめた一言メモの資料です。皆様の勉強の思い起こしに利用して下さい。講師は、癌研の武藤徹一郎先生「がんの完全な予防は不可能。がんと共存してゆく気持ちで」、トモセラピーの山田實紘先生「コンピューターが患部のみを選んで放射線照射」、重粒子線治療の平尾泰男先生「肺がんや肝臓がん、手術の難しい骨転移や悪性黒色腫の治療も目指す」等のご意見の活用や友人への紹介にも触れながら全体の紹介。(定例会5年間の一言特集は当会ホームページにも掲載してあります。)
3.「ロコモティブシンドローム(ロコモ・運動器症候群)」泉田良一様
「ロコモチャレンジ!推進協議会」委員長・社会福祉法人仁生社江戸川病院慶友人工関節センター長
梶原代表から、慶應義塾大学医学部、ドイツチューリッヒ大学で学ばれ、母校の助手、国立埼玉病院を経て現在の江戸川病院で外科手術を担当され、ロコモチャレンジ推進協議会の最高責任者でご活躍との紹介を受けて、若さと重鎮さとエネルギーあふれる泉田講師のお話が始まりました。江戸川病院の人工関節の専門医で、日本整形外科学会(2.3万人)の渉外担当とロコモチャレンジ!推進協議会の委員長を務めるが、本職は手術。病院は400病床で、人工関節の年間1710件の手術、日本の病院の平均は156件。人数では306人・股関節100、膝関節200人等。ロコモ対策でいつまでも自分の足で生きる生活を支えたい。ロコモの話の前にその前置きとなる四つ事柄「1健康寿命とは・2病気とは(西洋医学で)・3運動器とは・4歩くとは」の話をしたい。
1「健康寿命とは」。まず長野の「ぴんころ地蔵」の写真をご披露。元気に生きてピンピンコロリが良い。象の心拍数は20億回、呼吸は5億回で死ぬ。小さいネズミは呼吸等が早く2年位、大きい動物の象はゆっくりで長生き。信長は人生50年の唄舞をしたが、当時の平均寿命は32-33歳。50歳以上はオマケだった。多くの動物は孫の顔を見ることはない。現在日本の平均寿命は女86歳・男79歳。アフリカには30歳台の国もある。「健康寿命」はWHOの定義では、健康で日常的に「介護を必要としない」で「自立した生活ができる」生存期間で、04年日本は男72.3歳、女77.7歳、全体75.0際で世界一だった。平均寿命と健康寿命の差は療養人生で16-10年位。寝たままや誰かのお世話になる介護期間。
2「病気とは」。キーワードは近代医学の病理学総論。臓器を顕微鏡で観察し温度を図る等で判断。六種類あり、「腫瘍・炎症・循環障害・外傷・奇形・変性(老化現象)」がある。その対象は「骨や関節・肝臓・脳・その他」があり一覧表をご説明。骨や関節の場合にあてはめると、骨肉腫・リウマチ・大腿骨頭壊死・骨折や脱臼・股関節脱臼や斜頸・変形性関節症や変形性脊椎症がこれにあたる。
3「運動とは」。体の内側に心臓や循環器や消化器があり、その外に「運動器」としてネットワークで「固い支柱の骨・曲がる関節と椎間板・動かし制動する筋と靭帯と神経系」があり、歩行機能を支えており、これが損傷すると立ち上がれない・歩けないことになる。
4「歩くとは」。直立二足歩行。700万年前にチンパンジーから別れ類人猿に、そして20万年前に直立し、人に。直立歩行になって良かった理由としては1食糧供給仮説2日射病回避説3威嚇と視野拡大説4エネルギー効率説がある。膝を曲げて長く立つのは難しい。「正しい立ち方」を図面で示され、真横から見て重心線は、股関節の少し前方、膝関節の少し前方、足関節の前方を通過するとされ、股関節と膝関節は靭帯の緊張で安定化する。骨格や股関節や膝関節や足首関節がバランスよく配置され筋肉をあまり使わなくても立てる状態。
また「正しい歩行」とは、目的によっていろいろあり、1モデルウオーク・注目をあびる2モンローウオーク・魅力良くお尻を振る3すべり足・おそるおそるの歩き4ナンバ歩き・ラクダのような歩き等がある。歩く速さはチーター110km/h、ライオン60km、シマウマや熊50kmだが人間は3.6km。早く歩くのには向いていない。二足歩行は持久力を持つ。「正しい歩き方」はバレーボールが転がるように重心の移動を効率的にやること、省エネと安定が正しい歩き方だ。
さて我が国の人口1億2751万人、65歳以上が3074万人。超高齢化社会である。平均寿命は0歳の人の寿命で男79.7歳・女86.4歳。昭和23年は50歳だった。70歳の人の平均寿命では男85.1歳・女89.5歳となる。
健康寿命・介護予防を阻害する3大因子は、相互に関連あるが「内臓脂肪症候群・メタボリックシンドローム(メタボ)」と「運動器症候群・ロコモティブシンドローム(ロコモ)」と「認知症」であるが、厚生労働省の「介護や支援要因」の調査では脳血管障害23.3%、認知症14.6%、骨折転倒関節疾患脊髄損傷等の「運動器障害」21.5%、衰弱13.6%、その他です。運動器障害は高い割合です。整形外科の入院手術人口は25万人。 ロコモティブシンドローム「運動器症候群」の定義は運動器の傷害により介護や支援が必要な状態又はそのリスクが高い状態。人がとにかく歩けることを支援する。ロコモ対策は新国民病のキャンペーンネームである。主な原因疾患の有症者数は、変形性腰痛症3790万人、変形性膝関節症2530万人、骨粗鬆症(腰椎640万人、大腿骨頸部1070万人)で一つ以上の者は4700万人、二つ以上は2470万人、三つ以上全て540万人。即ち腰や膝の病気、背中が丸い脊椎圧迫、骨粗鬆症の骨折等がある。骨・関節・筋肉の働きが衰えると自立力が低下し介護や寝たきりの可能性が高くなる。
日本整形外科学会では2007年からロコモ対応を提唱しその予防啓発に努めている。ロコモティブは「運動の」という意味と「機関車」の意味があり、人の健康の根幹という考えを背景とする。「運動器」とは、骨・関節・靭帯・脊椎・脊髄・筋肉・腱・末梢神経など、体を支え(支持)、動かす(運動・移動)役割をする器官の総称。
2010年に日本整形外科学会と博報堂は医療・企業・行政の枠を超えて社会的に広くロコモに取組み、啓発し、ロコモに負けない社会をつくるため「ロコモチャレンジ!推進協議会」を設立。ロコモチャレンジを国民運動化した。ロゴマークも作成し、マスコミも注目し朝日新聞等が動き・健康日本21で 健康寿命を延長する行動が本年4月から本格的な実施へ。厚生労働省はロコモの国民の認識率を現在の17.3%から80%引き上げる目標を決めた。
ロコモ対策の第一歩は「日常の自分で気づく動作のチェックの7項目」です。
1 家の中でつまずいたりすべったり
2 階段は手すりが必要
3 15分以上歩けない
4 横断歩道を青信号の時間で渡れない
5 片足立ちで靴下がはけない
6 2kgの買い物の持ち帰り困難
7 家でのやや重い仕事が困難
これらを自己チェックし、一つでもあればロコモの疑いが有るので、次の「ロコトレ」2つで体を鍛えよう。第1は「開眼片脚立」・左右1分ずつ1日3回。第2は「スクワット」・深呼吸するペースで5-6回繰り返す。1日3回やろう。講師の御指導で会場の参加者全員でこのロコトレを練習しました。親族に電話を掛ける時は片足での「レクコール」もおすすめ。もしも痛みを感じたらお近くの整形外科へ。ロコモの三大要因は1バランス能力の低下・2筋力の低下・3骨や関節の病気です。各論で言うと1と2は転倒リスク高める。3は骨がスカスカになる骨粗鬆症、膝などの関節の軟骨がすり減る「変形性関節症」、腰などで神経が圧迫される「脊柱管狭窄症」が代表例。身体の関節の構造の例示として膝の関節軟骨や関節液関節包関節腔などの一体的機能をご説明。関節が、痛い・腫れる・変形・動かない・疼痛などの症状には強中弱の段階がある。生命力があるのに、パーツが駄目になったら代替品で対応の人口膝関節などの手術をする。50歳代から急増している。骨量は特に女性の場合少なく、特に閉経期に急減します。椎間板の機能は骨と骨の間の風船のようなクッションで衝撃吸収、支持性、可動性の基本。背骨は四足では梁だが、二足では大主柱。ロコトレと栄養でロコモに負けない身体を作ろう。何故なら1運動器は毎日造りかえられている・2その分解と形成のバランスに使用程度が影響する・3使用程度は適性が必要・過少だと維持されず・過剰では損傷につながる・4自覚症状なしに進行する・5頻度は高い・6運動器の傷害は要介護につながる、からです。
ロコモの心は古代民族の智慧と同じか。キューケルゴーは死に至る病は絶望のみとする。肉体の病は意志を持ち継続して動くことで。神話でも、シーシューポスは山の麓から大きい岩を頂上に向けて転がして挙げる、しかしこれは転げ落ちる、また挙げるの永遠の回帰の継続・神の劫罰1か。天界の火を盗みこれを人間に与えた巨人神のプロメテウスはゼウス神からその罰として手足を岩に繋がれたまま動けず毎日肝臓をハゲタカに食べられ、肝臓は毎日再生の継続・神の劫罰2か。私は想う。神よ与えたまえ。変わるものは変える勇気を。変わらないものは受容し受け入れる寛容を。そして両者を識別できる智慧を。と締め括られました。
我々の健康と運動の基本であるロコモ対策の基本的な心と実態と対応の考え方や実践を外科手術とロコレクを含め、判かりやすく、ギリシャ文明やユーモアを交えての素晴らしいエネルギッシュなお話に、会場からの拍手喝さいが続きました。会場からの多くの質問「身体が縮んでくるのは何故か。友人が脊椎変性狭窄症だが。関節へのサプリは直接効くか。大地震や火事で逃げられない人が多いが。91歳の母が転んで骨折したが杖なしでの回復をしたが。スクワットは強くか弱い継続が良いか。歯科医師で時間があれば患者にバレリーナの踊りを教えているが」に適切なご回答で再度拍手喝さいが。有難う御座いました。
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